知覚のスキル
知覚のスキルとはここでは以下の内容を指します
- 全ての感覚(視覚、聴覚、嗅覚、体感覚)を使って、クライアント・代理人・それ以外の人たちからの重要な手がかりを読み取る
- その家族に何が起きたのかを感覚的・直感的に感じ取る
- 代理人がコンステレーションで感じていることを自分自身でも感じ取る
- コンステレーションに居るべきなのに欠けている人を感じ取る
- 確定されていない代理人同士の関係性を感じ取る
- 未知の家族メンバーの性別と年齢を代理人を配置することで感じ取る
- 家系図からその家族に起きたこと、家族メンバーについてなどの情報を感じ取る
ファシリテーターだけでなく代理人も、全ての感覚を働かせる必要があります。かつて「焼けたゴムの匂いがします」と言った代理人がいました。部屋にそのようなものはありませんでしたが、それはクライアントの家族に起きたことを理解するための重要な手がかりとなりました。また、代理人がアルコールの匂いを報告したこともありました。ファシリテーターとして、あなたも似たようなことを感じ取れることがあるかもしれません。家族システムからの情報は、私たちの感覚全てに訴えかけることがあります。
あるコンステレーションで、3人の代理人が配置されるやいなや、全員が揺れはじめ、かがみ込んで、まともに立っていられない状態になったことがありました。それは通常では見られないくらいにドラマチックな光景でした
ファシリテーターは「この家族システムでいったい何が起きたのだろう?」と考えました。そう思った瞬間、「子どもが殺されたのだ。」という答えが浮びました。
このようにファシリテーター自身がコンステレーションを観察し、洞察することはたいへん役に立ちます。
ただし、コンステレーションをファシリテートする時は、「代理人が感じていることがファシリテーターの自分が感じたこととまったく同じだ」という確証が代理人からもたらされるまでは、この例でお話したような「ファシリテーターが感じたこと」を言うことも、それを基にしてコンステレーションを進めることもしません。
つまり、代理人が「目の前に亡くなった子どもが横たわっている気がする」と報告してくれた時、はじめて、ファシリテーターの自分が感じたことを信頼してもよいのだ、それを基にコンステレーションを進めてもよいのだということが分かるのです。
ファシリテーターとしてコンステレーションの中を歩き回るとき、それぞれの代理人の後ろに立ち背中からその人が見ている光景を覗きこむことをします。そこからの情景だけでは、何も理解できないときもありますが、代理人が向いているのと同じ方向を向くことで、体感が明確に感じ取れることがあります。時には、何か大変なものがある、とだけわかるときもあります。またはもっとはっきりと、「母親が子どもと一緒に横たわっている、二人は一緒に亡くなったのだ」とわかることもあります。しかしそれがどんなに明確に感じ取れたとしても、自分が感じたことをそのままコンステレーションに適用してはいけません。もしそうすると、クライアントはファシリテーターが、ファシリテーター自身の持つ家族のイメージを投影していると感じることがあるでしょう。そして実際にその通りのことが起きている可能性もあります。コンステレーションは、自分の感覚がどうであれ、代理人たちが受け取った情報をもとに全てを展開させていくべきです。自分が受け取った情報は、代理人たちの報告により確証が得られるまで採用しません。代理人たちから報告される内容が、あなた自身が知覚したものと合致したとき、その後のプロセスを安全に展開し、母子としてそこに横たわる代理人を配置するなどの働きかけを行うことができます。
コンステレーションを見るとき、代理人だけを見るわけではありません。何もない空間、より正確に言えば、何かしらの重みや濃さを感じる場所にも目を向けます。他に何も手がかりがないとき、例えば代理人にエネルギーがなく、展開していく方向性も見いだせないような場合は、グループにこう問いかけます。「今は手がかりがないのですが、ここであることを試してみたいと思います。」そして、場に重みがあると感じられた場所に男性か女性の代理人を配置するのです。こうすることで、しばしばコンステレーションは生き生きとし始め、動き出します。グループ全体へのこういった問いかけには、「いったいなぜこんなことをしているのだろう」と人々が疑問に思うことを防ぎ、全体を落ち着かせる目的があります。説明があれば、何か今までないことを試しているのだということがわかります。実際に、このように進めることで、その家族に起きた困難な出来事の中心にいた人をコンステレーションに加えていくことができます。しかし、そうやって加えた新しい代理人に何も起きないとしたら、今度はグループに「うまくいかなかったようですので、この代理人の方にはまた退場していただきます。」と伝えます。
代理人たちが受け取る感覚に従って新たに代理人を加えたときは、どの世代のどの位置に配置すべきかがわからないことがあります。それどころか、代理人たちの中で誰が年長者で誰が若い人であるのかも不明なときもあります。その場合、代理人たちそれぞれが受け取る感覚を活用します。彼らが、誰が古い世代で、誰が新しい世代かを明確に感じ取れることは珍しくありません。この方法を使用するときは、複数からの情報を照合し確認をとります。3~4人の代理人による情報が一致していたら、それに従い安全にコンステレーションを進めていくことができます。
同様に、複数の代理人が得た感触を照らし合わせることで、ある代理人の年齢や性別などについておおよその情報を得ることができます。
事前にクライアントから家系図を受け取っている場合は、家系図が本当の家族のフィールドであるかのように、それを使用して準備を行うことができます。実際にコンステレーションの場を歩き回り観察するときと同じように、家系図を目で追い感覚を働かせます。誰かの名前が目にとまったら、ワークの場で代理人を観察するときと全く同様の方法で、観察することができます。
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